暮らし

海外に暮らす人に聞いた
「私の収納実践法 ニューヨーク編」

まずは、ニューヨーク住宅事情

家賃の高さが有名なニューヨークだから、エリアを上手に選んで暮らす

世界で最も賃貸が高い都市の一つである、ニューヨーク。マンハッタンの月額レント(賃料)は年々増加傾向にあり、平均4000ドル以上(約42万円)とも言われています。若い世代が“世界的にも有名な”高い家賃を支払うのは難しいため、ルームシェアが一般的。
ルームシェアの怖い話と言えば、1992年の映画『ルームメイト』が有名ですが、たいていの人が、ルームシェアに関するホラーな体験をしていると聞きます。それでも運良く気の合うルームメイトが見つかることもありますし、複数でシェアしていれば賑やかで楽しく暮らせます。

今年は、パンデミックの影響で、レントは下がり、ニューヨーク近郊や、州外へ引っ越す人が増えていますが、借家人がいなくなると大家も困るため、なるべく出て行かれないないように、普段以上にメンテナンスを施して快適さを保持したり、借り手であるテナントに優しくしている、そんな話が伝えられています。

住まいと収納を披露してくださるのは…

飾るように自分の愛するぐい呑みを収納するブルックリンの陶芸家、タケダシノさん

タケダシノ プロフィール

2010年に陶芸家として活動を本格的にスタート。アメリカ国内とオーストラリア、カナダなどデンマーク、スウェーデン、ベルギーなど、海外でも大人気です。作品は手動ろくろを使う「手びねり」で。グリーンポイントのスタジオで、電気釜を使ったり、ニューヨーク郊外で薪焼きやらく焼きで作品を制作しています。作品はすべて一点ものです。

陶芸家のタケダシノさん。
住まいは、ブルックリンの新興エリアであるベッドスタイ地区のアパートメント

シホさんが住み始めた2006年ころは、ブルックリンはそれほど治安が良い地区とはいえませんでしたが、マンハッタンのダウンタウンから地下鉄のAライン(急行)で約30分。家賃が比較的手ごろなので、移り住む住人も増え、いまでは人気のエリアとなりました。

シノさんが住むアパートメントは、天井が高く日当たりもよくて、冬でも暖房がいりません。「快適過ぎて、眠くなってしまうこともあります」とシノさん。それもあって、シノさんの仕事場=スタジオは自宅とは別にブルックリンのグリーンポイントにあります。

天井が高く、日差しが差し込むシノさんのアパートメント。壁にはさまざまなアートワークが飾られ、その配置にも芸術家らしいセンスが香ります。

自宅のインテリアは、いちばん部屋の居心地の良さそうな場所にシノさんの大好きなプラント(植物)をまず配置し、洒落た家具を並べ、壁にはたくさんのアートワークが飾られています。アートワークは、アーティストの友人からいただいたもの、シノさんの陶芸品と物物交換したもの、あるいは友達の子供が描いてくれた絵など。小さな美術館のような賑わいです。

友人と歩いているときに見つけたプラント(植物)。そのプラントにぴったりな鉢植えを自作。制作当日、雨が降っていたので、鉢植えには雨の模様が入っています。

部屋の家具の棚には祖父が収集していたアンティーク家具やシノさんが制作した陶器などが並んでいます。

「古いものを、ハンドメイドのものしか持たない主義なんですよ。プラスチックやいわゆる電気製品が好きではないので、そういったものは部屋には皆無。家具は1920〜70年代のヴィンテージで、譲り受けたものか、自分で作ったもの。新しく購入したものは、ほとんどありません」

そう部屋の家具などについて話すシノさん。

ヴィンテージの家具に自分で取手を付けたり、タイルを貼ってみたり、手を加えています。親戚にアンティーク好きの叔母がいらして、彼女から譲り受けたものも多いそうです。

「コレクションしている日本の“ぐい呑み”。ウォールナッツの棚に飾りながら収納しています」とシノさん

左側に掛かっている棚が友人に特別に作ってもらった棚。ぐい呑みがきれいに並ぶ棚にしました。

「ぐい呑み」収納用の棚は実は大工の友人の「GN Woodwork」に依頼して製作してもらったもので、木を選び、棚の高さや幅などを指定してオーダーメイドで作ってもらったものです。

また集めている食器などを収納しているのは高校の化学室などで試験管や薬品を入れるのに使われていた棚です。1段目にコレクションしているヴィンテージ食器、2段目には収集している伊万里焼の食器類。その棚には親友が作った陶芸品や、昔のおもちゃ、ホームパーティなどに使われる食器なども収納されています。

食器などのコレクションは、高校の化学実験室で使われていたと思われる棚を使って収納

中段の棚にコレクションされた伊万里の焼物は無造作に置いたように見えますが、高低差をつけて見える収納です

衣類も住まいの中で、さりげなく素敵に収納

「部屋の模様替えをしたのは今年の初めでした」と話すシノさん。工場生産のものが好きでないので、それらは全部寄付して、ヴィンテージ品と、手作りのものだけを置くようにしました。
ですから部屋に置いてある家具も1920〜70年台に制作されたヴィンテージの家具類などがほとんどです。

そんな家具の中で目にとまったのが、優しい風合いのセーター類が畳んで積み上げられた1脚のソファ。アメリカらしいゆったりとしたパーソナルソファ。でもここになぜセーターが? これは整理中? と思いきや、「虫に喰われないようにソファに積み上げているの」とのこと。

飾るわけでもない、ごく自然な形での収納。手の届く範囲できちんとモノと向き合っている感じがなんとも心地よいものです。

さらに部屋のインテリアだけでなく、クローゼットも見せてもらいました。帽子、スカーフ、ベルトなどのアクセサリー別にまとめて収納。洋服もヴィンテージものから、ファッションデザイナーの友人たちの服が多いそうです。

日本の方から見たら、クローゼットとはいえ、洋服と靴が一緒に収められているのはちょっと驚かれるかもしれません。
「これがこの部屋のベストな配置だと思います。だからいまのところ模様替えや家具の配置を変える必要はないと考えています」

料理が大好きなシノさん。コロナ禍の前までは友人を集めてのディナーパーティもしばしば開いていました。
自身で作った器で料理をテーブルに並べてみんなで楽しんでいましたが、アメリカでも冬に入ってウィルスが再び活発化。なかなか親しい友人が集う機会も減りましたが、それでもシノさんは使い込んだ家具と自分の好きなものに囲まれて、アメリカで快適な生活を送られています。

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取材/長谷川安曇 編集/小暮昌弘 撮影/加藤里紗

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