トランクルームにしまう前に!
プロに聞くお手入れ方法
Vol.6
“一生に一度”の感動を大切に残す
ウエディング・ドレスの正しいお手入れ方法とは
幸せに満ち溢れた結婚式の象徴として、ウエディング・ドレスを一生手元に残したいと考えている方も多いはず。美しい思い出とともに、ドレスも色あせることなく大切に残すにはいったいどうすればよいのでしょうか。ドレスを脱いだ直後やしまうときにどんなことに気をつけるべきかをドレスデザイナーの荒井悦子さんに教えて頂きました。
教えてくれるのは…
「クロカンブッシュ」オーナー兼デザイナー 荒井悦子さん
「感動を蘇らせ、幸せを受け継げるものだからこそ、大切に手元に残して」
結婚式という大切な一日に自分のためだけに作られたウエディング・ドレスを纏うことは多くの女性にとっての憧れでもあります。
「真新しいドレスをまとうことの特別感はもちろんのこと、とくにオーダーメイドで仕立てるドレスには、作るまでの過程も含めてドレスに対しての思い入れがぐっと深まります。だからこそ、大切に手元に残しておきたいと思えるのでしょう」(荒井さん)
ドレスを手元に残すメリットとはどんなことがあるのでしょうか。 「お友達やご姉妹に貸したり、あるいは数十年後にご自身のお嬢さんがそのドレスを譲り受けるという方もいらっしゃいます。誰が着たか分からないものではなく、自分にとって親しい人を幸せにしてくれたドレスを着ることは、その幸せを引き継ぐという意味もあると思います」(荒井さん)
結婚式の感動をカタチとして残すだけではなく、人に受け継げることも魅力のひとつ。だからこそ着た後のお手入れ方法はとても重要。
「久しぶりにクローゼットから出したら、真っ白だったはずのドレスにシミやカビがついていたら悲しくなってしまいますよね。そうしたトラブルを避けるためにも着たあとは、できるだけ早くクリーニングに出してください」(荒井さん)
そして大切なのが“しまい方”だと話してくださいました。
「変色やカビを防止するためにも直射日光が当たらず、温度や湿度など空調管理がしっかり整っているトランクルームにしまっておくことをおすすめします。何十年経っても美しいままであったら、仕立て上がったドレスを手にしたときの感動、そのドレスをまとって祝福を受けたときの喜びが鮮明に蘇ってくるはずです」(荒井さん)
ドレスのお手入れ&収納方法
①汗や飲み物のシミはタオルで抑えて応急処置
ウエディングドレスの汚れでとくに多いのが汗や飲み物などのシミ。応急処置として乾いたタオルで水分を抑えて、シミの範囲を広げないようにすること。さらに、ドライヤーの冷風や扇風機で風を当てて乾かします。
汗ジミや飲み物などの汚れを乾かすのに温風を当てると、熱でタンパク質などの成分が酸化し、生地の変色を招いてしまいます。ドライヤーは温風ではなく冷風にして水分を飛ばしましょう。また、汚れを落とそうと、水や洗剤で洗うのはNG! かえって汚れの範囲を広げて輪ジミの原因に。
②着用後はできるだけ早くクリーニングへ
ウエディングドレスはシルクやレースなどの高級かつデリケート素材を使っているうえ、裾には泥、首もとにはファンデーション、脇の下には汗、胸もとには料理などさまざまな汚れが付着しています。こうした素材や汚れにしっかりと対応してくれる高い技術を持った専門のクリーニング店にお願いすることがドレスを新品同様に蘇らせるポイントに。購入したドレスショップにおすすめのクリーニング店を紹介してもらうのも手。
一見、きれいだからといってクリーニングに出さないのはNG! 日本酒や白ワイン、草花の汁、ヘアスプレーなど透明な液体は月日が経ってから変色して黄ばみになることも。目に見えない汚れは必ずあると思って、できるだけ早くにクリーニングに出しましょう。
③直射日光の当たらない場所にしまう
しまうときには、変色やカビを防止するためにも直射日光が当たらず、空調のあるクローゼットやトランクルームなどにしまうのがおすすめ。ボリュームが少なく、丈もそれほど長くない場合は、通気性のよい不織布のカバーをかけ、ハンガーに吊るしてしまってもかまいません。ただし、シワにならないようスペースに余裕をもって吊るすようにして。
ビニールに入ってクリーニングから戻ってきたドレスをそのまましまうのはNG! 通気性の悪いビニールはカビや虫食いの原因になります。すぐにビニールから取り出して陰干しをし、湿気やクリーニング溶剤を飛ばしてから専用のカバーや箱にいれて収納して。
④トレーンの長いものなどは畳んで箱に入れて
ボリュームがあったり、トレーンが長いなど吊るして仕舞うことが難しい場合は、畳んで箱に入れておきましょう。畳む際の注意点はできるだけ、シワが寄らないようにすること。折り目の部分には白い薄紙を挟むとシワが付きにくくなります。
⑤胸もとは紙を筒状にして型崩れ防止
立体的になっている胸もとは型崩れしやすく、シワが目立ちやすい場所でもあります。しまうときにはバストの丸みに合わせて紙を筒状に丸めクッション代わりに使用。胸もとが一番上にくるようにしまえばシワの心配もありません。
⑥ベールはハンガーを使えば畳みやすい
生地が軽くて扱いにくいベールは頭につける部分をハンガーにかけ、裾から折り畳めば一人でも簡単にしまうことができます。
⑦帽子は大きさに合わせた箱に入れて
型崩れしやすい帽子は幅や高さの合った箱に入れてしまうこと。形がきれいに保たれる上、重ねて収納できるので便利です。
ドレスを収納する前のお手入れについては上記のような手順で進めれば、家であってもトランクルームであってもある程度はいい状態を保てそうです。さらに荒井さんから、収納のための便利な道具も教えていただきました。
全国のトランクルームを探すにはこちら
https://www.hello-storage.com/list/
長期保管には無酸素パックもおすすめ
こちらは下記でご利用できます。
https://kogoshi.co.jp/publics/index/39/
保管状況に不安がある人は、虫食いやカビ、湿気、黄変を防止する高純度の窒素ガスを封入した無酸素パックを利用するのもあり。高価なシルクのドレスも安心です。
Data
クロカンブッシュ
デザイナーの荒井悦子さんの手によって生まれる普遍的な愛らしさやお洒落感を醸すドレスに出会えるサロン。オリジナルのデザインで一から仕立てるフルオーダーをはじめ、レンタルドレスやゲストドレスの取り扱いも。購入したドレスは式後、パーティドレスとしてリメイクするなど、長いお付き合いができるサロンとしても評判。
価格
オーダーの目安 ¥300,000~ レンタル目安 ¥200,000~
*素材・デザインによって変わってきます。
期間
オーダーの目安は3カ月、レンタルは2カ月前
*調整が可能な場合もありますので、お電話でお問い合わせください
東京都港区南青山4-17-33 グランカーサ南青山001
Tel 03-6886-2570
https://www.croque-en.co.jp/
撮影/田村浩章 取材・文/堀 朋子