ハウツー

トランクルームにしまう前に! 
プロに聞くお手入れ方法

Vol.3
時代を経ても心ときめく日本の伝統をまとう“きもの”を大切に持ち続けるには

七五三の晴れ着、成人式の振袖、結婚式の白無垢…。日本人にとってきものは、人生の節目を彩る大切な装いでもあります。その一方で、着る機会の少ないきものを長い間たんすの奥にしまったままにしている人も多いのでは? 
大切なきものも、お手入れを怠るとシミやシワの原因に。大切なきものを長く手元に残すために必要な方法は知っておきたいもの。そこで、きものスタイリストの石田節子さんに、着た後のお手入れやしまい方、収納方法について教えて頂きました。

教えてくれるのは…

きものスタイリスト 石田節子さん

プロフィール
1955年東京生まれ。日本有数のきものコレクターできものデザイナーでもある故池田重子氏のもとで着物修行を積む。1990年に着物スタイリストとして独立。新旧にこだわらないおしゃれで小粋な石田流のスタイリングが口コミで広がり、CMや雑誌で活躍。NHK「おしゃれ工房」で講師を務めた他、「ソロモンの王宮」「情熱大陸」など各メディアに出演。

日本の伝統でもあるきものだからこそ、大切に手入れをしましょう

若い頃に誂えたきものや親族から譲り受けたきものなどをたんすの肥やしにしてしまっている人もきっと多いはず。

「きものというのは、お手入れさえしていれば何十年経っても着れるのが魅力です。帯や小物の合わせ方ひとつで着たときの雰囲気を変えることもできますし、縫い糸をほどけば一反の生地に戻るというのがきものの素晴らしいところ。たとえ今はきものに興味がなくても、いつかきものに目覚めるときがきっとくるはずです」

寸法を変えたり、リメイクをするなどし、長く愛用できるのも、きもののよさ。

「絹などデリケートな素材で仕立てられているきものは、空調の行き届いたトランクルームにしまうのもおすすめ。季節の変わり目には、虫干しをしながらきものに触れ、『このきものを着ておでかけしてみよう!』と思って頂けたら嬉しいです。きものは、実際に着て風を通すこともお手入れのひとつ。ぜひ、普段のお手入れ方法を知って、職人さんの手によって生み出された貴重なきものを長く大切に扱ってくださいね」

きもののお手入れ&収納方法

①ハンガーにかけて陰干し

きものを着たあとは、すぐにハンガーにかけて柔らかい布やブラシで全体をなでるようにしながら埃を取ります。そのまま半日から一日、陰干し。風を通すことで湿気を飛ばします。ハンガーはきもの用がなければ洋服用のものでOK。

NG!

ハンガーに長く吊るしておくと、裾がたるんだ袋状になる場合も。きものは長期間吊るさずに、畳んで収納しましょう。

②汚れやシワをチェック

陰干しをしながら汚れやシワがついていないかを確認。衿はファンデーションや食べこぼし、袖口は皮脂汚れ、裾は埃や泥はね、胴回りは汗じみがつきやすいので要チェック! 汚れを発見したら悉皆(しっかい)屋やきものを扱うクリーニングでしみ抜きをしてもらいます。 強いシワがついているようであれば、きものをハンガーに吊るしたまま布で覆ったアイロンを当ててシワをとります。

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汚れを発見したら、何かのついでに… などと思わずにすぐに対処を。汚れが染み込むとやっかいです。

部分洗い、丸洗い、洗い張りの使い分けは?

きものは洗濯しすぎるとかえって生地を傷めてしまうため、洋服のように着る度に洗ったり、こまめにクリーニングに出すのはNG。汚れや汗ジミなどは悉皆屋などの専門店で“シミ抜き”や“部分洗い”をしてもらいます。きもの全体をドライクリーニングする“丸洗い”や“京洗い”は、生地が傷むのでできるだけ回数を抑えること。古いきものを仕立て直す場合は、きものをほどき反物の状態に戻して水にくぐらせる“洗い張り”を行います。

③折り目に沿ってきれいにたたむ

埃を取り、汚れやシミをチェックし、陰干しをしたら、きものを広げて折り目に沿ってたたみます。折りジワや型崩れを防ぐためにも、裾や角が揃うようにたたむことがポイント。着たときに目立ちやすい衿元などは特に丁寧に。

④一枚ずつたとう紙に入れる

きものは、型崩れや湿気を防ぐために、一枚ずつ“たとう紙”と呼ばれる紙製の包み紙やウコン染めの風呂敷などに入れます。石田さんは、中にどんなきものが入っているかすぐに分かるように、たとう紙の表にきものの特徴などを書いているそう。

⑤湿気を防いで収納

湿気はきものの大敵。カビや変色の原因になるので湿気のたまりやすいところには絶対に収納しないこと。理想的な収納場所は湿気に強い桐ダンスですがない場合はたとう紙に入れて通気性のよい棚に置いてもOK。プラスチックなどの収納ケースを利用する場合は、下にすのこを敷くなどして防湿対策をしっかりと。

桐たんすも無く、虫干しもできない場合は?

三層構造の特殊フィルムが湿気やカビ、虫害、臭いからきものを守ってくれる着物保存袋「きものキーパー/ジェイケミカル」を使うのも手。防虫剤や虫干しも不要で場所も選ばないため、気軽に収納できます。

定期的に虫干しをして湿気を飛ばしながら、きものの状態をチェックすることが大切

虫干しのときに役立つ伸縮タイプのきものハンガー(左上)や携帯にも便利な折り畳み式のきものハンガー(左下)、畳むときなどきものが汚れないように下に敷く衣装敷き(右)などがあると便利。

虫干しは湿度の低い晴れの日に、きものをハンガーにかけて2~3時間、陰干しを。衣替えのタイミングで行うのもよいでしょう。虫干しができない場合には、たんすの引き出しを開けて風通しをするのも効果的です。
虫がつきやすいウールと絹のきものは一緒にしないこと。防虫剤は何種類も併用すると化学反応を起こすことがあるため、一種類に決めて、期限ごとに入れ替えること。

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石田節子流着付け教室

きものスタイリストとしてTVや雑誌で活躍する石田節子さんの着付け教室。“簡単、らくちん、補正なし、器具不要”の石田節子流着付けが学べるほか、きものや帯、小物の販売、レンタル、着付けサービスなども行う。“石田好み”と呼ばれるセンスのよいコーディネートを体験できると評判。

東京都中央区日本橋富沢町9-9矢島ビル2F
TEL03-6661-2709
https://setsukoishida.jp

撮影/田村浩章 取材・文/堀 朋子

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