トランクルームにしまう前に!
プロに聞くお手入れ方法
Vol.2
メインテナンスがモノを長持ちさせる
靴磨きプロへの第2ステップ
「スエード靴のお手入れ法」
お洒落な人のほとんどは靴が大好きです。自宅にあって場所を取り、トランクルームを借りたときにぜひとも保管しておきたいと思うモノの筆頭も靴ではないでしょうか。
大事な靴をそのまま保管し、靴を長持ちするためには保管する前だけでなく、普段からのお手入れがとても重要です。Vol.1では一般的な表革の革靴のお手入れを株式会社R&D
代表取締役社長の静孝一郎さんに教えてもらいました。今回は、お手入れが難しいと思われるスエード靴について、誰でもできるケア方法を聞きました。
スエードやヌバックなど、起毛された革のお手入れはブラッシングが大事
靴を磨きなさい。そして自分を磨きなさい──これはフランスで100年以上の歴史を持つ高級シューズブランド、ベルルッティの当主だったオルガ・ベルルッティ の言葉です。同ブランドは毎年靴磨き好きを集めてシャンパンで靴を磨くイベントを開いていたそうですが、磨きぬかれた靴を履くことは身嗜みを何倍もお洒落に見せてくれるものです。
革靴の中にスエードやヌバックといった起毛皮革をアッパーに使ったものがあります。一般的な表革の革靴にくらべてファッション度がアップし、秋冬の時期には足元にセンスをもたらし、ソフトな革の感覚から春夏の時期に素足で履くのもとても気持ちがいい素材です。
お洒落度が高い反面、表面が起毛されていますので汚れが付着しやすく、普段のお手入れが重要です。
「起毛素材の代表的な靴はスエードだと思いますが、実は普段のお手入れはそれほど難しいものではありません」
Vol.1で表革の靴磨きを実践したいただいた株式会社R&Dの営業企画部の主任、竹林賢人さんは話します。
①ホコリ落としのブラッシング
表革の靴と同じく、まず靴にシュートリーを入れることが大事です。革のシワやヨレが伸びるので細かい部分までお手入れができます。
シュートリーを入れたら、金属が使われたワイヤーブラシで表面のホコリや汚れを落とします。「金属ブラシを使うと(表面が)傷つくのではないかと思われる人もいますが、もともと起毛素材の革は表面を毛羽立てて作っている革なのでよほどの力が入らない限り傷つくことはありません」と竹林さん。
ただし婦人靴の場合は注意を。繊細でふわふわとしたスエードが用いられる場合もあるので、その場合はスポンジタイプのブラシを使用することを薦めてくれました。ブラッシングの方法は、手首を返すような感覚で。毛に入り込んだホコリをかき出し、毛がつぶれてしまった部分を起毛することもできるので、見た目もきれいになります。
②仕上げの栄養・防水スプレー
全体的にブラッシングした後は、栄養と防水用のスプレーをかけてあげます。起毛素材の靴の普段のお手入れはこの2ステップで完了。どうですか、簡単でしょう。このスプレーは新品の起毛素材の靴を履く際にもかけておくといいでしょう。色合いをキープし、防水力がつくことで、汚れや水ジミが付きづらくなるので、履く前にかけてあげましょう。全体に満遍なくかけ、後は乾燥させるだけです。
③毛並みを整える
「スエードに代表される起毛された革は乾燥した状態で水やジュースなどをこぼしてしまうと革の中に一気に入ってしまい、汚れが落としづらくなってしまうので、ビフォアケアが大事です。毛先いっぱいまで油分が潤った状態だと、水も弾く。いいコンディションで履くことがスエード靴を長く履くコツです」と竹林さん。
スエード靴を履いて雨に遭ってしまい、大事な靴を濡らした経験をした方も多いはず。長い間濡れてしまった靴を放置しておくと、素材がゴワゴワした状態になってしまいます。
「その場合はスエード用の汚れ落としスプレーを全体にかけて、さっぱりした状態にした後、栄養スプレーをかけてあげるといいですよ」(竹林さん)
さらにブラッシングで落ちない頑固な汚れにはゴムの粒子をブロック状にした消しゴムタイプのクリーナーもあり、スエード靴の多く持っている方は一度揃えておくといいかと思います。
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取材・文/小暮昌弘 撮影/稲田美嗣