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世界初!フェンシングの「折れ剣再生プロジェクト」が日本から始まる
〜SDGsの各界の取り組みとは〜

ハローストレージでは、東京オリンピックフェンシング男子エペ団体金メダリスト 見延和靖選手にトランクルームを提供するなど、選手活動の応援をしています。
昨今、SDGsの取り組みが各方面で行われているなか、フェンシング業界では見延選手が発起人となった「折れ剣再生プロジェクト」が発足したと聞き、ハローストレージでのSDGsの活動も含めご紹介していきたいと思います。

プロフィール紹介

見延和靖みのべかずやす選手

肩書き&経歴:
フェンシングエペ日本代表
リオデジャネイロオリンピック出場個人6位入賞、
2018-2019シーズン 世界ランキング1位(年間王者)
東京オリンピック 団体金メダル

生年月日:1987年7月15日生まれ
出身:福井県越前市

「初」 にこだわったカイロ世界選手権での活躍

まずは見延選手。2022年7月開催されたカイロ世界選手権でのエペ個人戦日本人初銀メダル、そして団体戦日本初銅メダル獲得おめでとうございます。

ありがとうございます!
個人の2回戦では接戦になるとは思っていましたが、自分らしい試合ができたことでさらに高揚感が増し、銀メダルをとることができました。
今までやり遂げられなかったことを達成する「初」に意味があり、その「初」にこだわっていたので、今回世界選手権エペ初の銀メダルを獲得できたことをすごく嬉しく思います。
また今年ワールドカップがあったり、来年4月からは、2024年のオリンピック出場をかけた選考レースが始まりますので、さらに頑張っていきたいと思っています。

「折れ剣再生プロジェクト」について見延選手の想いとは

試合や練習でお忙しい見延選手ですが、フェンシングのSDGsとしての取り組み「折れ剣再生プロジェクト」を始められたと聞きましたが、どんな取り組みですか?

フェンシングで使用する剣ですが、練習量の多いトップ選手でも1人あたり年間2~4本ほどは折れてしまいます。フェンシングの剣は、種目によって剣の質も違いエペが一番高くて3~4万円くらいなのですが、折れた剣は産業廃棄物として捨てるしかなく、高校生の頃からずっと 「もったいない、どうにかできないかな」と思っていたんです。

以前から「折れ剣」については想いがあったんですね。

はい。フェンシングの剣は日本で作られていなく輸入品で、しかも職人のハンドメイドなので高価な上に、愛着のある剣を廃棄するのはやはり気持ち良いことではなく、選手はみんなそんな想いをもっていると思います。

そんな中オリンピックが終わり、一般社団法人日本スポーツSDGs協会(JSSA)が発足して、「フェンシングで何かSDGsができないか」 と協会のかたからお話があったときに、今まで感じてた想いをお伝えしたところ、2022年1月から 「折れ剣再生プロジェクト」が始まることになったんです。

折れ剣再生プロジェクト本格的スタート!

折れ剣といっても、馴染みがない方も多いと思うので教えていただきたいのですが、そもそもどの部分が折れて、どの部分を再利用したんでしょうか?

持っているのが折れた剣です。折れると剣先も根元もどちらも使えないので交換ですが、今はその根元の部分を使用してリサイクルしています。

その折れ剣ですが、どのようなものに再利用できるんですか?

スタートとして、メダルとタグプレートを制作し、現在はナイフや包丁の試作をしています。

折れ剣の回収はどのようにしているんですか?

日本フェンシング協会が主導して折れ剣を回収しています。現在はナショナルトレーニングセンターの入口に折れ剣回収BOXを設置し、日本代表選手に折れた剣をそのBOXに入れてもらう仕組みになっています。
今はその1拠点しかありませんが、折れた剣は色々な所で発生しているのでゆくゆくは、例えば各フェンシングクラブさんや、フェンシングの道具を販売している商会さんも巻き込んで設置展開を検討していけたらと思っています。

©日本フェンシング協会

折れ剣を再利用したメダルが出来上がり、イベントで授与されていると聞いたのですが、どんなイベントだったんですか?

実は、第一弾として、8月13日に私が監修した、地元の福井県越前市で小中学生を対象にした福井国体レガシープログラム「はじめてフェンシング」というイベントを開催しました。
そこでは私が企画した団体戦「MINOBE FENCING TEAM CHALLENGE」を実施し、その表彰式で「折れ剣」のオリジナルメダルを贈呈しました。

▲見延選手と、イベントには佐藤希望選手も参加

3位以上でメダルが獲得できるので、子供たちが折れ剣のメダルをかけて本気で試合に取り組んでいて、嬉しかったですね。

わあ! おしゃれなメダルですね。置盾おきだてになってるんですか? 

はい、実はメダルの制作工程で、今は折れ剣の根元の方を伸ばして、それをくり抜いてメダルにしているんです。

▲剣の根元を伸ばしてくり抜いたメダル

だからどうしても厚さが薄いメダルになるということもあり、もちろんメダルとして首に掛けられるようにリボンも用意はしましたが、このように置盾にして飾れるようにと考えました。

この枠に重ねてみると分かりやすいのですが、横に線が入っていると思います、これは折れた剣の状態をそのまま生かして再利用したので、あえて残したんです。

そしてメダルが取れなかった子たちにも参加賞として、みんなに折れ剣の記念タグをプレゼントしました。

それは粋なプレゼントですね!メダルやタグなどのデザインも素敵です。

ありがとうございます!
実は兄がデザインの仕事をしていて、メダルやそれを入れる置盾のデザインをしてくれています。

職人によって新しい命が吹き込まれた「折れ剣」の姿とは

ちなみに先程からお話しを伺っていて気になっていたのですが、見延選手はこのプロジェクトに関して、どこまで関わっているんですか?よくある話しだと企画をするだけ、ってことも正直ありますが

金額などに関しては違う方にお願いしていたりはしていますが、再利用をしてくれる企業さんに直接加工のお願いをしに行ったり、メダルや包丁にする案を出したり、もちろんサンプルチェック等、制作に関わるほとんどのことに関わっていますよ。

*マネージャーさん談:見延選手は本当に中心人物として動いています!

メダルに関しては紹介で、武生特殊鋼材株式会社さんにお願いをしました。
そして刃物は、2015年11月にエストニアで行われた、フェンシングワールドカップで優勝したことをうけ、2016年1月に越前市の表彰式で「市民スポーツ文化大賞」の表彰をもらった時、高村刃物製作所さんの包丁、「ダマスカス ウェーブメタルハンドル牛刀」 をいただきまして。「こんなにすごいものがあるのか」とその包丁に感動し、それがきっかけで、折れ剣再生に協力していただけないか直接ご連絡をしました。
最初は、「こんなすごい職人さんにお願いして良いものだろうか」と不安でしが、意を決して連絡したら、そんな凄いかたなのに快く「やろうよ、何を作ろうか」と、とっても前向きにお話を聞いてくださったんです。

素敵なお話ですね!その刃物は完成したのですか?

まだ試作品ですが、サンプルを作っていただきました。
折れた剣の量がまだ少ないので、いまは小さめの果物ナイフとなっています。

▲左から3本目が果物ナイフの試作品、左から4本目が包丁の試作品

すごい!本当に包丁になっていますね!
折れ剣の包丁って他の包丁に比べて違うところってありますか?

剣の素材は、航空機やロケット用に開発された高強度な「マルエージング鋼」で、素材にはレアメタルも含まれています。金属加工屋さんからすると、折れ剣は結構貴重な素材で、実はそのまま捨ててしまうには勿体無いようなんです。
それが包丁となると、しなって折れずらく軽くて、一般的に販売されている包丁より切れ味がいいと思います!

この包丁は販売されるのですか?

ハンドメイドで一つ一つ職人が作っていて大量販売は難しいんです。
なのでゆくゆくは、地元越前市のふるさと納税の返礼品でお渡しできるようにしたり、クラウドファンディングをしてその返礼品にできればと考えています。
また、想いとしては海外にも持って行って、商品を広めたいとも思っています。

海外にもですか?海外で折れ剣のリサイクルした例はあるのでしょうか?

海外で再利用した例は聞いたこと無いですね。今回のプロジェクトが「世界初」だと思います!
折れ剣がもったいないと思うのは海外の人でも同じなんだと思うので、そういう活動が世界にも広がるといいなと思っています。

世界初!「折れ剣再生プロジェクト」 のさらなる目標とは

また世界初ですね!今後の目標は他にありますか?

国内で剣を生産していない日本の選手はフランスやウクライナなどから輸入した道具を使用するしかないのですが、将来的には、自分たちが使用できる剣を作るところまで目指していけたらと思っています。
メダルは、今、剣の根元を平く伸ばして切り抜いていますが、剣の折れた先も含めて溶かし、型を作って流し込み厚みのあるメダルも作れないかと思案中でです。

そして将来は地元の福井だけではなく、日本全国の職人さんたちの技術を世界に伝えていけるような事が、本プロジェクトを通してできるようになればと考えています。

フェンシングは試合する相手も必要ですし選手としても1人では活動できません。
周りの支えてくれている方たちに感謝の気持ちを持ち、また選手の想いや剣の再利用等について、未来の選手たちに繋げていくことも大切だと思っています。

「折れ剣再生プロジェクト」の周囲の反応

プロジェクトを立ち上げた時、周りはどのような反応でしたか?

以前、同じフェンシングエペの加納選手が、とても気に入っていた剣が折れてショックを受けていました。そこで、私が「その剣包丁にするか」と声をかけた所、「お願いします!」と嬉しそうに折れた剣を預けてくれました。剣は先ほど言った様に職人さんの手作りのため、一つ一つ微妙に違います。相性もあるので、本当に気に入ってる剣が折れてしまった時は結構ショックなんですよね。
フェンサーはみんな折れ剣がもったいないと常々思っていて、このプロジェクトを立ち上げた時はOB・OGの方が「見延よくやった」と言ってくれました。

応援コメントをご紹介します

佐藤 希望さとう のぞみ選手

・フェンシング 女子エペ 日本代表
・ロンドン・リオデジャネイロ・東京五輪3大会出場
・フェンシング協会選手会会長

「折れ剣再生プロジェクト」 最初にこれを聞いた時は、とても驚きました。
いつも練習場には、みんなが練習や試合で折れた剣が沢山捨ててあって、これはもう捨てるしかないものだと思っていました。
が、そんな折れた剣がメダルになって、先日の越前市での大会で子供たちにメダルとして手に渡った時の嬉しそうな顔を見ると本当に剣の姿が変わっても、日本代表の戦ってきた魂が子供達に引き継がれているような気がして感動しました。また今後も折れ剣がいろいろな新しい形になって、たくさんの人の元へ渡ると嬉しいなと思います。

鈴木 朋彦さん

一般社団法人日本スポーツSDGs協会 代表理事

昨年8月に見延選手とお話しさせていただいた際に、折れた剣をどうにかしたいという想いに共感し、本プロジェクトをサポートさせていただくことになりました。多くのアスリートが思い描く社会貢献には、自身が行ってきたスポーツと自身を育ててくれた故郷への恩返しという意義があります。折れた剣を故郷の伝統産業の力でアップサイクルし、競技を頑張る子供たちや応援してくれる人々に夢を与える本プロジェクトは、今後のスポーツSDGsのあるべき姿を示してくれていると思います。弊会としても全力サポートして参ります。

ハローストレージのSDGsへの取り組みを紹介

各業界に広がるSDGsの取り組みは、ハローストレージでも。
そもそもハローストレージの環境への取り組みは、事業内容にも通じています。
トランクルームを活用し、自宅の荷物を収納、住居を整地整頓することにより無駄な買い物の減少、収納利用による廃棄物の削減など「モノを大切にする文化」を提案しています。

他にもストレージ収納物の処分を行う時には、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の観点から環境を意識し廃棄物の削減をおこなっていたり、最近ではトランクルームで使用している設備も再利用ができるよう工夫をしています。

一例をご紹介します。

(1)トランクルームに設置されている照明のLEDへの変更

エネルギー消費量の削減で脱酸素社会へ環境に配慮。

(2)コンテナタイプの長寿命化など資源循環型社会へ

製造時の素材、材質、そして設置方法や設計の見直し。

▲コンテナ
▲バイク駐車場で使用のバリカー
▲消化器のボックス
▲固定階段

今回はSDGsという観点から、フェンシングとハローストレージのトランクルームの活動をご紹介しました。

全国約9万件以上の物件を展開するハローストレージの取り組みは、一つ一つの積み上げが大きな影響をもたらすことに、見延選手のフェンシングでの世界初 「折れ剣再生プロジェクト」は第一歩を踏み出し、日本から世界へ・・・未来への展望も楽しみです。
今後も注目していきたいと思います。

写真:齋藤 よりこ  文:朝比奈 朋

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