トランクルームにしまう前に!
プロに聞くお手入れ方法
Vol.5
よい素材、よい仕立てのスーツほど
日々のお手入れと収納が肝心
「スーツのお手入れ法」
スーツほど男性のスタイルを凛々しく見せてくれるアイテムはありません。社会全体がカジュアル化した昨今ならばなおのことスーツの効果は絶大です。しかしシワがよっていたり、プレスがきちんとかかっていなかったり、くたびれて見えたり……。そんなスーツでは着こなしは台無しです。
今回はメンズスタイルのキーとも言えるスーツ、あるいはジャケットのお手入れ方法を、イタリア南部、ナポリで1957年に創業されたテーラードブランド「イザイア」を日本で扱うイザイアジャパン部長市瀬晃央さんに聞きました。
教えてくれるのは…
イザイアジャパン 部長 市瀬晃央さん
イタリア生まれのイザイアは1957年、南イタリアのナポリで創業
イザイアは、ナポリ郊外のカサルヌォヴォという街の服地商であったエンリコを中心に、コッラード、ロザリオのイザイア三兄弟によって創立されたブランドです。
職人による手仕事とミシンをうまく使い分けたスーツ作りで高評価を受けており、個性あふれる同ブランドは世界中のセレブリティやファッショニスタに愛用されています。
「今季のテーマはナポリの地下都市「ソッテラネア」からインスピレーションを受けたコレクションで、深みのある色合いとヴィンテージ調の生地が特徴です」と話すのはイザイアジャパンの部長市瀬晃央さん。
スーツを長持ちさせるためには日々のこまめなお手入れが大事
今回はイタリア製のスーツに詳しい市瀬さんにスーツやジャケットのお手入れの方法を聞きました。
「私たちの店でもスーツを買い求めたお客様からいちばん聞かれるのがクリーニングの件です」
市瀬さんの場合は、春夏用のドレスパンツはシーズンに何度かクリーニングを出しますが、ジャケット=上着は基本的にクリーニングには出さない、秋冬用のジャケットの場合、ほとんど出すことはないと話します。
「クリーニングに出すとしても、汗やシミ等の汚れが気になった時に信頼のおける店に出します。高級紳士服の生命線でもあるラペル(襟)周りの仕上げ方などについて直接窓口でリクエストを聞いてくれるようなお店だと安心して出せますね」
ドライクリーニングの場合、揮発性溶剤を使われることもあり、その場合はスーツ生地にダメージを与えることもあります。「イザイア」のように高級な素材を使い、職人技を駆使して柔らかく仕立てるスーツの場合、生地や仕立ての風合いが大事に、プレスにしてもそうしたことを理解した上でクリーニングしてもらわなければならないのです。
「スーツのお手入れの基本はブラッシングにあると思います」
「その上で湿気がないところにしまっておくことが大事になってきます」と市瀬さんはスーツのお手入れの基本について断言します。
市瀬さんによれば、スーツを着る前と着た後にブラッシングをするというルーティンを持つべきだと話します。特に重要なのは着用後でしょう。スーツのような目の細かい生地は外を出歩くと知らない間に繊維の隙間に無数のゴミやホコリが詰まってしまうものです。
ブラッシングは、ホコリなどを取るだけでなく、生地のテカリや毛玉ができることを防ぐことにも繋がります。 「ブラッシングをするブラシもピンキリですが、専用に作られた馬毛のブラシであれば問題ないと思います。これ1本で、スーツからコート、ドレスパンツまでブラッシングできます。カシミアのニットジャケットなど、デリケートな素材を使ったジャケットならば、もう少し繊細な毛で作られたブラシを選べばいいと思います」
スーツの保管にはハンガーの形状にも十分注意すべき
日々のブラッシングに加えて、スーツのお手入れで重要なのが保管方法です。スーツはハンガーにかけて吊るして保管する人が大多数だと思いますが、ハンガーの種類にも気を使わないと、スーツに変なクセが付いてしまうこともあります。
「イザイアのスーツの場合もそうですが、最近のスーツは胸まわりに心地を入れて柔らかく立体的に仕立ています。それに肩などにパッドをほとんど入れていないものが圧倒的に多くなっています。そんなスーツの場合、保管用のハンガーは重要です。スーツのサイズに合わせたハンガーを選ぶべきです。イザイアの場合、ハンガーの横幅がジャケットのサイズによって3、4cm違いますから」とハンガーの重要性を市瀬さんは説きます。
平面的な薄いハンガーは問題外、「イザイア」のハンガーのようにサイズがピッタリ合っていればいちばんいいと思いますが、少なくとも厚さがあり、前に向かって湾曲したジャケットに沿うような立体的なハンガーにかけておくべきでしょう。
「スーツを着て自宅に帰った後、ブラシでコンディションを整え、通気のよい場所にかけておいてからクローゼットなどに収納するとよいと思います」と市瀬さん。
ある程度隙間を空けて収納する方がスーツにとっては優しい
市勢さんの場合、たくさんのスーツをお持ちなので、クローゼットに収納する場合も、シーズンによって今季着るスーツ、着ないスーツと分けて収納していると話します。
「狭い場所にたくさんのスーツを入れ過ぎてしまうと、やはり服を痛めてしまうことになります。もちろんビニールカバーをかけた状態にしておくのもよくありません。そこから熱や湿気がこもってしまうので、服にあまりよい影響は与えません。カバーをかける場合は通気の良いものをおすすめします」(市瀬さん)
スーツは流行の少ないアイテムのひとつで、長い間着ます。日々、簡単なメインテナンスをするだけで、いつでも凛々しくスーツを着こなすことができます。
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イタリアメイドのスーツの職人技が堪能できるショップ
ISAIA Napoli
東京都港区赤坂9-7-3
東京ミッドタウン プラザ1F
TEL.03-6447-0624
営業時間 11:00〜20:00
東京のランドマーク、東京ミッドタウンの1階にあるアジア初となる同ブランドの旗艦店。イタリアの伝統的なスーツ、ジャケットから、カジュアルウエアまでトータルで揃うショップです。
取材・文/小暮昌弘 撮影/稲田美嗣